5人の有識者にアンケート

地方創生の目利きが選ぶ「今注目したい地方」

2017/10/03(火) 公開

地方創生のプロたちはどの地方に注目しているのか。5人のベテランたちにアンケートを実施しました。

谷中 修吾
地方創生イノベータープラットフォーム INSPIRE 代表理事
静岡県出身。公益財団法人松下政経塾を卒塾。NPOにて経済産業省キャリア教育プロジェクトのモデル事業化を実現した後、外資・戦略コンサルティングファーム Booz Allen Hamilton にて政府機関・民間企業の経営戦略策定・実行支援を経て、新規事業のマーケティングを専門とするビジネスデザインファーム Velvet & Company を設立。グローバルカンパニーのマーケティング施策をプロデュースするとともに、さまざまな地方創生ソーシャルビジネスの創出を手掛ける。BBT大学・BBT大学大学院MBA准教授。
1 注目の地方
岐阜県郡上市
2 その理由
まちづくりのイノベーターが集まるホットスポットになっている。小水力発電を牽引する平野彰秀さんや狩猟の6次産業化に取り組む猪鹿庁長官の興膳健太さんをはじめ、0から1を生み出すイノベーターの人口密度が高い。そのため、新しいプロジェクトが次々と創発され、新しい地方創生まちづくりが加速する。
3 その地方オススメのスポットは?
石徹白(いとしろ)
白山の麓に位置する秘境。住民全戸出資の小水力発電でも脚光を浴びているが、その本質は、人口減少集落で新しい地域社会のあり方をデザインするという試み。少子高齢・人口減少の先にある地域の未来が、穏やかに力強く息づいている。
4 その地方オススメの逸品は?
くくりひめカフェのランチ
http://kukurihime.cafe/
石徹白で土日祝日のみオープンするコミュニティカフェ。地元食材に精通した素敵な女性の皆様が、心を込めて提供するランチが最高。「いとしろ野菜ランチ」「けいちゃん丼ランチ」がオススメ。神々の棲まう白山中居神社前というロケーション。
5 その地方を知る一冊・またはその地方に限らず、現在の地方の問題点や理解が深まるオススメの一冊
『ぼくらは地方で幸せを見つける ソトコト流ローカル再生論』指出一正(ポプラ社)
倉成 英俊
ビジネス・クリエーション・センター 電通総研 Bチーム代表
1975年佐賀県生まれ。2000年電通入社。クリエーティブ局に配属以降、広告のスキルを拡大応用し、各社新規事業部とのプロジェクトから、APEC JAPAN 2010や東京モーターショー2011、IMF/世界銀行総会2012日本開催の総合プロデュース、佐賀県有田焼創業400年事業など、さまざまなジャンルのプロジェクトに携わる。バルセロナのMarti Guixeから日本人初のex-designerに認定。小学校の時の将来の夢は「発明家」。
1 注目の地方
はっきり言って、全国その土地土地で、どこでも面白いですよね。
なので、注目の地方は、日本全国!
強いて言えば、故郷佐賀県。
2 その理由
佐賀は人口も少なく、マイナーなイメージだと思いますが、21世紀は小さいことが効く。県の動きも必死で早い。だから面白い。アバンギャルドなことがたくさん生まれています。また、シャッターが下りたお店ももちろんあるけれど、逆に、クルマで行ける場所に、若い人が立ち上げた、面白い店がけっこうある。ネットでつながり、クルマで行く。これが21世紀の商店街的姿かも!?

3 その地方オススメのスポットは?
(1)LIB COFFEE IMARI
http://lib.in.net/coffee/
地域活動にも熱心な森永一紀さんが伊万里で経営されているコーヒー屋さん。
朝はご近所のご年配が、昼はママが、午後から高校生が集う。
話題の「筋肉かき氷」もここで発想され、最近は若者に向けた「世界一周学校」なるものへの協力も始められています。熱くて、面白い。
LIB=Life is Beautifulというのも納得。

(2)弘道館2
https://www.kodokan2.jp/
大隈重信をはじめ佐賀の七賢人を育んだ藩校弘道館を、教育方針を受けつぎ、バージョンアップさせるプロジェクト。佐賀出身者が総動員で21世紀に必要なスキルを教え、オンラインでも配信。海外からの輸入型教育に右往左往しがちな日本の教育ですが、教育もLocalの土着思想が、オリジナルを生むはず。毎回講座ごとに、佐賀県内の面白そうな場所でやるpop-up藩校。
4 その地方オススメの逸品は?
中里隆さん、中里花子さんの器。佐賀には“デザインゴッド”がたくさん。
5 その地方を知る一冊・またはその地方に限らず、現在の地方の問題点や理解が深まるオススメの一冊
『円を創った男』渡辺房男(文藝春秋)
大隈重信の活躍を描いた作品です。弘道館で培ったディベート術や交渉術。そのエピソードが、感動的。ビジネスに確実に使えます。大人になるまで知らなかった。ヒント満載です。
藤吉 雅春
「Forbes JAPAN」副編集長
1968年佐賀県生まれ。「週刊文春」記者として、政治、北朝鮮問題、人物ルポなどの取材・執筆をした後、2011年に独立。民間事故調「福島原発事故独立検証委員会」ワーキンググループメンバーとして「調査・検証報告書」執筆に携わる。近刊に編著者として関わった(財)日本再建イニシアティブ『日本最悪のシナリオ 9つの死角』(新潮社)がある。著書に『福井モデル 未来は地方から始まる』(文藝春秋)など。
1 注目の地方
大分県別府市
2 その理由
「ダイバーシティ」や「シビックプライド」という言葉が登場する、ずっと前から、それが当たり前の生活習慣として根付いている。

たとえば、最近、クラウドファンディングで「湯~園池」をつくったことが話題になったが、この話の核心部分はクラウドファンディングではない。長野恭紘市長が「遊べる温泉都市構想」を発表した際、実は市役所内は「できっこないよ」と、冷めていた。大きなことを言い出した若い市長に、市民が心配して、「市長、大丈夫か?」と、密かに市民たちによる「裏チーム」ができて動き出したのであり、そうした「別府愛」に火がついた市民たちの存在を知り、市役所の職員たちも自分事のように協力を始めた。「湯~園池」が完成すると、地元のスナックのママが「これで子供たちを湯~園池に連れて行って」と、児童養護施設に100万円を寄付するなど、知られざるエピソードを聞いていくと、この町らしさにあふれている。そうした気風がある町だ。

また、多様性がなぜ根付いているのかというと、温泉地ゆえの湯治に関係がある。昔から病気を抱えた人や原爆の被爆者が湯治をするために訪れ、そうした人々の施設が多く存在した。また、温泉地ということもあり、花街に流れてくる子連れの女性、外国人など、さまざまな背景をもった人たちがいて、「過去は聞くな、お互い背負った思いは湯で流せ」という風潮があり、裸になれば人間は平等だという意識が地元の人たちとの話から当たり前のように聞こえてくる。そうした土壌のため、身体障がい者雇用の先駆けでもある。

立命館アジア太平洋大学が2000年に開学した際も、バス代にも苦労する発展途上国からの留学生を迎え入れるため、大勢の市民が自家用車で福岡空港に迎えに行っている。ちなみに、人口12万人で留学生約3200人は、人口あたりの留学生率で全国1位。

このように「混ざり合う」という共存文化は突出している。アートフェスティバルなどが活況なのも、こうした多様性文化が影響している。また、大分県では当時の平松守彦知事による「一村一品運動」が提唱されていた。「地方創生」という言葉が誕生するはるか前の1979年のことだ。平松知事はアジアのノーベル賞とも言われる「マグサイサイ賞」を受賞している。「地域論」の元祖ともいえる土地である。
3 その地方オススメのスポットは?
・「ベップ・アート・マンス」混浴温泉世界実行委員会の主催による1カ月間のアートフェス
・「混浴温泉世界」3年に1度のアートフェス
・竹瓦温泉(共同浴場)
ひなびた昭和な感じの温泉街があちこちにあり、散策するだけで楽しい。
4 その地方オススメの逸品は?
特にありません。
5 その地方を知る一冊・またはその地方に限らず、現在の地方の問題点や理解が深まるオススメの一冊
『ガラパゴス・クール』船橋洋一(東洋経済新報社)
地域活性化の本ではないが、ここに所収の毛丹青教授のレポートは面白い。中国人の視点で描かれた日本。
高橋 俊宏
「Discover Japan」編集長
1973年岡山県生まれ。1999年エイ出版社入社。建築やインテリア、デザイン系のムックや書籍など幅広いジャンルの出版を手掛ける。2009年に日本の魅力、再発見をテーマにした雑誌「Discover Japan」を創刊。雑誌を通して地方活性の活動にも積極的に関わる。
1 注目の地方
富山県高岡市
2 その理由
産業観光が盛んで、クラフトツーリズムという新しい観光が芽吹いている。クラフトツーリズムとはものづくりの職人の現場で、実際に職人の技を見学し、体験できるツアーのこと。高岡市では市一丸となって取り組んでおり、職人鋳物や漆器などの体験ツアーが大人気になっている。
3 その地方オススメのスポットは?
鋳物メーカー・能作の新ファクトリー
4 その地方オススメの逸品は?
能作のテーブルウェア、すずがみなど錫でできたテーブルウェア、高岡ラムネ
5 その地方を知る一冊・またはその地方に限らず、現在の地方の問題点や理解が深まるオススメの一冊
『地域ブランド クリエイターズファイル』(エイ出版社)
内田 研一
ビジネスプロデューサー
1994年早稲田大学商学部卒。商品リクエストサイト「たのみこむ」プロデューサー等、 webマーケティング、新商品の企画販売実績多数。ベンチャー、中小製造業の新事業立ち上げ支援が専門。経済産業省の輸出促進検討会の委員他、秋葉原ブランド委員会プロデューサー、3次元データを活用する会の理事等を兼任。
1 注目の地方
山梨県甲州市勝沼町
2 その理由
山梨のワイン造りの歴史は1870年代にまでさかのぼると言われています。ワインはフランスのモノとも言えますが、既に山梨のワインは“葡萄(ぶどう)酒”として、完全に地域に根付いた地酒であり、その“葡萄酒”が醸し出す“和”が地域の最大の魅力です。

現地に行けば、各ワイナリーが気さくに受け入れてくれる土地柄であり、ワインツーリズム等のイベントも定着化しています。また各ワイナリーのオーナーも個性的で、話し始めると止まらない勝沼醸造の有賀社長や、丸藤葡萄酒の大村社長など濃くてユニークなキャラの方々がたくさんおられるので、“葡萄酒”片手にお話を伺っていると、時間を忘れてしまいます。勝沼の中心となる「ぶどうの丘」の温泉からの眺望も絶景です!
3 その地方オススメのスポットは?
各ワイナリー(勝沼醸造、丸藤葡萄酒工業、中央葡萄酒、ルミエール)
4 その地方オススメの逸品は?
山梨ワイン(甲州種、マスカットベリーA種)
5 その地方を知る一冊・またはその地方に限らず、現在の地方の問題点や理解が深まるオススメの一冊
『本当に旨い甲州ワイン100』新田正明(イカロス出版)